まもなく公開模試の始まる季節がやってきます。志望校の欄に,どんな学校の名前を記入したらよいか。親の期待と子どもの実力との間で,それぞれの思いは廻ります。今回は子どもの実力を測る目安となる「偏差値」のお話で
す。
偏差値は,進路指導の便利な道具として,40年ほど前から公立の中学校
で使われ始めました。大学入試に共通一次試験という新しい仕組みが取り入れられてからは,「偏差値教育」とか「偏差値世代」など,しばしば世間の話題にもなりました。
悪いイメージで登場することが多いのはご存知の通りです。8年前,文部
省が業者テスト排除の大号令を発して以来,公立中学校の中では偏差値は用いられなくなりましたが,現在でも会場模擬試験のデータとして活用されています。
一方,中学入試の場合は公開模試の合否判定に,偏差値はなかなか採り入
れられませんでした。それはなぜでしょうか。その答えの中に,偏差値の持つメリットとデメリットが隠されています。
集団の中の位置を表す尺度。簡単に言えば,偏差値とはテストごとの順位
のようなものです。順位ですから100点満点のテストであなたが90点を取っても,他のみんなが100点を取ればビリ,最低の値がつきます。逆に,10点でも,みんなが0点ならトップの成績がつきます。
このような成績のつけ方を相対評価といいます。通知表の5,4,3,2,1もそれぞれ上位から7%,24%,38%…と順位で区切って評定を決めています。ただし,新しい教育課程の始まる来年度からは,目標の達成度で計る絶対評価で,評定を行うことになりましたが・・・。
公開模試などで使われる偏差値は,最高(トップ)75から最低(ビリ)25
まで,50が平均点のところに来るように算出されています。
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五段階評価に直してみると,75〜65が5,65〜55が4,55〜45が3…と偏差値の一の位が5のところが5,4,3,2,1の区切りに揃います。
大勢の生徒の合否がひとつの試験で決まるタイプの入試では,偏差値が大いに力を発揮します。公立高校や大学などの入試予測に広く使われているのが,その例です。対照的に,中学入試では試験は小規模に,各学校ごとに,別々の問題で行われます。
中学入試の合否判定に,偏差値がなじまない理由のひとつが,ここにあり
ます。受験生全体の中での大まかな位置はわかっても,志望校ごとの合否を予測するのは難しいのです。そこで,公開模試では受験生に志望校の名前を記入してもらい,学校ごとの順位で合否を予測しています。
それでは,偏差値は要らないではないか,というと,そんなことはありません。限られた受験日程を有効に使うためには,自分の位置を全体の中で心得ておくと便利ですし,国語は強いが算数がダメ,でも理科が最近良くなってきた。なんて学力の変化を客観的につかめるという利点もあります。
偏差値が使いにくい理由のもうひとつは,その数値が乱高下することにあ
ります。出題された問題との相性や時間配分の巧拙など,実力以外の要素が入り込む余地が多いのです。加えて小学校高学年といえば,心身ともに子どもの成長の著しい時期です。スポンジが水を吸い込むように,知識をどんどん吸収して,短時間に急成長するケースも珍しくありません。
偏差値の最大のデメリットは,その奴隷となって希望を捨て,夢をあきら
める受験生を生むところにあります。しかし,偏差値は動きます。現在の偏値が40付近に位置していても,将来トップランクの大学に進学する可能性は十分にあります。
次回は,その実例をいくつかご覧に入れたいと思います。
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